ショーン・コネリー似の風貌に作務衣を着て、畳の上で座禅を組む日本びいきのおっちゃんだ。ハーバードの医学生時代に西洋医学の限界を知り、患者を治すためにはどのような技術が必要なのかを求めて、世界中の治療家を訪ね歩いたほどの探究心旺盛なお医者さんである。京都にも来ている。
北米・南米・アジア・アフリカなどの伝統医学やシャーマニズムのフィールドワーク。その実践的研究から、代替医学・薬用植物・変性意識、治癒論の第一人者となる。現在はアリゾナ大学医学校教授。
主な著書は『癒す心、治る力』(角川文庫)、『人はなぜ治るのか』(日本文教社)で日本の西洋医学の医師の中にも、ワイル先生の感化をうけた先生は少なくない。西洋医学にどっぷり浸かっていることに気づかず、そのことに無自覚だったわたしの身体観、病気観が先生の著書を読んでから変わった。
東京女子医科大学東洋医学研究所所長だった代田文彦教授の『お医者さんがすすめるツボ快癒術』と『もう大病院には頼らない』(ともに講談社)に出会った。
そこにあったのは「薬はときどき病気を治す」とか、「医者は病気を治さない」などという、それまで念頭にない世界だった。これにはびっくり仰天。まさかそんな考え方がこの世にあろうかとは夢にも思っていなかったからだ(鍼灸の臨床経験を経て、この言葉を実感した。とりわけ不妊の分野では、この言葉通りになっている)。
薬はいつも病気を治し、医者も病気を治してくれるものだ、とばかり思いこんでいた。こうした偏見で脳を染めたまま、人生を終えるという、後悔きわまりない道を歩みかけていたぼくの後半生を、代田先生は変えてくれた。
それまでの50年間、わたしは「体からのメッセージ」や「体が教えてくれる声」にほとんど関心など持っていなかった。「『体が教えてくれる声』にもっと耳を傾ける」という指摘は新鮮だった。2003.1没
印象深く、身体観の視野を広めてくれたのは「なぜ休みの日に体がだるいのか」の一文だった。➡関心のある方はこちらを。